山の怪談第二弾
大晦日の知床にて、謎の気配と金縛り。
そして・・・・
2000年10月10日(月)
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山の怪談第二弾です。今回はばりばりの神秘否定主義者の、もりさん(三段山クラブ名古屋支部長)からのお便りです。厳冬期の怪奇現象というのも、かなり珍しいと思います。

畜生魂の話、興味深く読みました。

畜生魂の由来は気になるところです。ああ、行ってみたい。ドラム音については、私も何だか経験があるような気がします。いつ、どこでかは記憶に無いのですが、その時に聞き流していて後で「そういえば、あの状況であの音は不自然だったなぁ」てな感じです。 ただ私も超自然・オカルト関係は全く信じないのですが、やっぱり恐怖はありますよね。怪奇スポットを蹂躙しまくっている師匠と比べると、ちょっと甘い。

で、私の北海道での怪奇体験はというと、コレが厳冬期なんですよ。怪談と言えば夏が旬ですが、へそ曲がりはこれだから・・

大学二年の時ですから、コレまた十年以上の昔ですか。私は大学のN先生(今はカナダでスキーガイドをしているそうです)と正月を「自然の中」で過ごすために、知床に向かってクルマを走らせていました。企画としては大晦日にウトロの野営場でテント泊をして、翌日に知床五湖を目指してクロカンで歩くという無謀かつバカなものです(このコンセプトについての是非は問わないで下さい)。

途中、吹き溜まりで出来た路上の雪山に突っ込んでスタックしたりして時間を使い、ウトロに着いたのはすっかり暗くなってからでした。当たり前ながら野営場も雪の中で、私たちは管理棟の様な建物の脇の雪を持参したスコップで掘り下げると、テントを設営しました。

暖かい夕食を作って食べ、少しばかりのアルコールを入れて体を温めると、あとはもうする事がありません。我々はシュラフにくるまり、早々に眠りに落ちたのでした。テントの外では昼からの風が強さを増して野営場の木の梢をごうごうという音と共に揺らしていました。

どのくらい経ったでしょうか。ふと、ものの気配で目が覚めました。時間は分かりませんが、一時ぐらいでしょうか。風は相変わらず強く、テントもまるで見えない手で揺さぶられる様に揺れています。風の音以外は聞こえない闇の中で、しかし確実にテントの外を徘徊するかのような気配を感じました。この夜中に?歩く事も大変な積もった雪の中を?

その瞬間は特に恐怖は感じませんでした。山の中ならクマの心配もしたでしょうが、ここは一応、町中です。おおかたキツネが食い物を狙って来たのだろうぐらいに思っていたのです。北海道のキャンプでは良くある話ではないですか。逆に気配はそのくらいハッキリと感じられたのです。

すると、突然隣で寝ていたN先生が「ううっ、う〜ん」と呻き声を上げだしました。うなされているというような感じではなく本当に苦しそうだったので起こそうかと思った瞬間、先生は飛び起きて体を激しく振りました。あまりの事に呆然としていると、「今、金縛りにあっていた、苦しかった〜」と言ったのです。
私は昼間のスタック脱出で疲れてたんですよ、と言って再び眠りに落ちました。

翌朝には風はすっかり収まっていました。しばらく居心地の良いシュラフの中でぐずぐずした後、朝食の準備の為にテントの外に出た我々の目前に広がっていたのは、墓石の群でした。ウトロの野営場はお墓の隣だったのです。昨日の到着時には暗くて気づきませんでしたが、我々はお墓に一番近い所で幕営していたのです。

テントの周りの雪には新たに雪が積もったわけでもないのに、足跡一つ残っていませんでした。

旦那のコメント:
気配、金縛り、お墓という三点セットが揃っていたというのが、このお話の肝ですね。
知床では、私も縦走中にテント場で夜中にクマさんの訪問を受けたりしました。これはこれで怖いものですが、まだ対処可能な怖さですからね・・・


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