2007年11月23日(金) 上ホロカメットク山化物岩雪崩レポート

十勝連峰の雪は依然不安定 入山者は注意を!

2007年11月23日12時5分、十勝連峰上ホロカメットク山(1920m)の通称・化物岩東側斜面で雪崩が発生。雪崩は標高差約190mを流れ落ち、ヌッカクシ富良野川の谷底を埋めた。
谷底を歩いていた日本山岳会北海道支部の11人パーティーは上部から落ちてきた雪崩に巻き込まれた。
雪崩に巻き込まれたものの自力で脱出した同パーティーのメンバーや周辺にいた登山者がただちに行方不明者の捜索を開始したが、4人が死亡、1人が重傷を負う大惨事となった。
この付近では、10日前から複数の雪崩が発生している。入山者にはくれぐれも慎重に行動し、雪崩装備を必ず携帯するよう注意を喚起したい。


雪崩の範囲



幅約70m、厚さ70〜80cmにわたって雪が崩れ、崖状の谷の中を標高差約210m、沿面距離にして約490mを駆け下った。

雪崩発生地点(上ホロカメットク山・標高1620m付近)

デブリから発生区を見上げた様子。遙か上部に破断面が確認できた(撮影:雪氷災害調査チーム)
     

破断面の全景。長さ約70m,断面高さは70〜80cmと推定された(撮影:雪氷災害調査チーム)

破断面のクローズアップ(撮影:雪氷災害調査チーム)


■(社)日本雪氷学会北海道支部 雪氷災害調査チームの見解(2007.12.7):

11月24日に撮影された写真を見る限り、発生区では斜面に残った雪は薄いようであることから、積雪の底に近い層が破断し雪崩が起こったと考えられる。さらに、破断面が広範囲に走っているため、大量の降雪による弱層なしの点発生乾雪表層雪崩の可能性は低いであろう。デブリには土砂などが混じっていないため、全層雪崩の可能性も低い。
したがって、今回の雪崩は面発生乾雪表層雪崩とみられる。
デブリ近くの自然積雪の断面観測結果によると、積雪深134cmの場所で、弱層の剪断強度(シアーフレームインデックス:SFI)は雪面から8cmで61kgf/m^2、20cmで36kgf/m^2、60cmで102kgf/m^2強であった。また、最下層にあたる110cm付近のこしもざらめ雪(ざらめ雪含む)の剪断強度も100〜120kgf/m^2程度と小さく、上載積雪が100cmあるため斜度15度でも斜面安定度(スタビリティインデックス:SI)は1.5程度と不安定な状態であった。
また、11月13日に発生した下降ルンゼ雪崩の破断面で11月17日に実施した断面観測結果によると、深さ75cmの積雪の雪面から44cmの位置にこしもざらめ雪(霜ざらめ雪含む)の弱層が確認されている。
本調査では、破断面での調査を行なっていないため断定はできないものの、これらの調査結果を踏まえると、積雪の底に近い層がこしもざらめ雪や霜ざらめ雪などの霜系の弱層を形成し、その層が破壊して雪崩に至ったと考える事ができる。
この推定が正しいとすれば、霜系の弱層は焼結が進みにくく積雪が安定するのには時間がかかることが予想されるため、上ホロカメットク山周辺のエリアでは、まだしばらくは引き続き雪崩に対して警戒をする必要があるだろう。

日本雪氷学会北海道支部 雪氷災害調査チーム


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