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2004年3月25日(日)
富良野岳ホコ岩シュート滑降クロニクル BY かっちゃん
危険! ! ! ! ! 雪崩・滑落
以下の文章は、ホコ岩シュートから帰還したかっちゃんに、旦那が状況を聞いて整理・補足したものです。

旦那:どおだった?
とにかく、今までのスキー滑降の中では、一番やばい滑降だった。
ホコ岩からドロップした地点には、ボーダーのシュプールらしきものがあった。途中で消えていたので、シュートの核心部に入ったかどうかは不明。
滑り出しの雪質は良く、テレマークターンもできたが、だんだんと雪質がウインドパックされた難しい雪質に変化してきた。雪崩が起きそうだなと思ったら、いきなり足下から破断面30センチの雪崩を誘発した。もし自分より上から破断していたら、下まで流されて死んでいたと思う。

旦那:その時点で引き返せなかったの?
雪質が不安定で、この場所を登り返したら二次雪崩を誘発する恐れがあった。
ホコ岩シュートは、スキーヤーズライト側とレフト側に二本のコースがあるが、今回はスキーヤーズレフトのルート(青のライン)
で降りた。ライト側にはクラストした雪が厚く付いていたので、もしそちらを滑ったら逃げ場の無いところで雪崩にやられていたと思う。
レフト側のルートは、周辺部は雪崩の破断面だらけ、中心部は雪が落ちきってガリガリのアイスバーン状態になっていた。
やばいと思ったが、シュートは急斜面のうえ両側が崖状になっているので、ここを引き返すにはアイゼンと両手にアイスアックスが必要だった(当然持っていない)。
二次雪崩が怖かったので、とにかく一刻も早くシュートを抜けたかった。
シュートは真っ直ぐに見えるが、実際には結構ジグザグになっていて、上部で滑落したらパチンコのように岩に衝突しながら落ちることになると思う。
この時には、本気で雪崩で死ぬか滑落して死ぬか、どちらが良いか考えてしまった(旦那:結論は雪崩だったらしい)。
斜度の緩い部分は、アルペンのプロペラターンで降りたが、そのうち斜度がきつくなり、立ったまま両手を斜面に付けながら横滑りで降りていった。高度差600mのうち、400mはそんな状態で降りたと思う。
ずっとその体制で滑り降りたので、足がパンプして震えがきた。
アイスバーンは波状になっていたためエッジが立ちにくく、シュートの下部でエッジが抜けて滑落してしまった。最初は板を横にして落ちていったが、岩がシュートの両側からせり出しているのが見えたので、このままでは岩に板が当たって弾かれてしまうと思い、板を真下に向けて直滑降の姿勢にして落ちてすり抜けた。その後雪崩の破断面に猛烈な勢いで衝突し、板が突き刺さって止まった。その時に首を強打してしまった。
最後の裾広がりの斜面は、50センチくらいのブロック状のデブリだらけで、まともに滑ることはできなかった。
雪崩と滑落の危険性がミックスされた、非常に危険な滑降だった。
雪質が良ければ、話は違ったと思うが、今回の雪質は最悪だった。

旦那:事前に偵察していたよね?
一昨日にシュートの源頭部分にまで入る偵察を行い、さらに凌雲閣からシュートを観察して、良好そうな状況を確認していたのだが、二日間の間にシュートの核心部の状況は一変していた。
滑降するのなら、もっと春先になって全面がザラメになるか、もっとしっかり雪が付いている早い時期の方が良かったと思う。しかし偵察しても核心部の雪質は滑ってみないと確かめようがない。

ホコ岩シュート全景 2004年4月3日撮影 撮影:MARIC
赤と青のラインで示す二つのコースがあり、今回滑ったのは青のライン

このホコ岩シュート滑降クロニクルは、決して武勇伝の類ではありません。
かっちゃんは、二日前に偵察を行って、それなりに安全性に自信をもってホコ岩シュート滑降に挑戦しましたが、実際には二日間の間に雪質が激変していて大変危険な状態に陥ったという、貴重な警告のレポートです。
雪質が危険だと分かった時には登り返すこともかなわず、斜面に手を突きながら横滑りをしている様は、すでに「滑降」では無くて「生き残るための脱出」状態になっています。
滑降の様子を聞けば聞くほど生きていたのが不思議です。
ホコ岩シュートは、今シーズンにすでに複数の人が滑降していますが、滑降の正否は雪質に大きく影響される事が分かります。そして、雪質の悪化に気づいたときには、すでにどうしようもない状況に陥りやすい所であることも・・

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