なにがなんでも秀岳荘シール。本当?
2002年11月21日(木)
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先日、嫁が秀岳荘シールで大変な苦労をしました。
シーズンインからそれまで少人数で新雪の上を歩くツアーばかりで、嫁は「秀岳荘シールでなんら不自由しないから、これなら秀岳荘シール一本で行こう!」と思ったらしいのですが、その矢先の失敗でした。
良い機会ですので、秀岳荘シールに対する旦那の考えを整理してみました。

秀岳荘シール(取付シール)について。
貼付シールと比較して、どちらが良いか時々議論になることがあります。旦那のスタンスは、基本は貼付シール。予備として秀岳荘シールを持とうというものです。
しかし、取付シールだけでも問題ないという方もたくさんいらっしゃいます。なぜ意見が割れるのでしょうか?

例えば、単独行であまり人のトレースを辿らないような人は問題を感じないでしょう。
秀岳荘シールは新雪には良く効きます。むしろ剥がれるトラブルが無いし、着脱を繰り返すことができるなど大きなメリットがあります。
多人数のツアーでも全員が取付シールなら、これも問題は少ないでしょう。

しかし、人のトレースを辿ったり、大人数の貼付シールと取付シールの混合ツアーで登ると、様々な問題が出てきます。
まず、辿るトレースが堅く踏みしめられていると、取付シールはどうしてもスリップしやすくなり、かなり疲労します。
さらに混合ツアーの場合、貼付シールの人はどうしても効率良く直登しようとしますが、後続の貼付シールのトレースを辿ろうとした取付シールの人は・・
スリップして登れない〜ジグを切り直す〜ラッセルして疲れる〜直登より移動距離が多くなり皆から遅れる〜遅れを取り戻そうと、つい貼付シールのトレースに合流してしまう〜スリップして登れない・・(^_^;)
という風に「スリップ疲労のサイクル」にはまり込み、どんどん皆から遅れ且つ疲労していきます。そうなると気持も負けてきます。
体力のあるベテランならこれでも大丈夫ですが、不慣れな人にはハードルが高すぎます。私が新人に特に貼付シールを勧めるのはこうした事態をよく目にするからです(というか、自分が昔そうだった)。
しかも、雪面がクラストしてくると、単にジグを切ればいいという問題ではなくなります。
取付シールはどうしても「ズレ」が発生するので堅い雪面のトラバースが苦手なのです。
そうなるとルートそのものを考え直すか、その地点へスキーをデポすることになり、ツアー全体の行動に影響を与えてしまいます。三段山ですとだいたい四段目でこの問題に遭遇します。
まあ、シールとスノーシュウ混合ツアーほどではありませんが。

しかし、取付シールも工夫次第で性能を改善できます。
横ズレを防止するために、
1.シールとスキーのソールの間に畳用両面テープを貼付るか、貼付シール用接着剤を塗ってしまう。
2.ゴムバンドで縛る
3.スキーアイゼンを使用する。山スキーの人はスキーアイゼンが使用できます。テレマーカーがうらやましがる部分です(極一部のテレビンディングはスキーアイゼンが取付可能です)。
このような対策をすることにより、かなり横ズレスリップはしなくなります。

また、貼付シールオンリーというのも感心しません。予備シールとして取付シールも携行していくことを強くお勧めします。
メンテナンスの悪い貼付シールは取付シール以下の代物ですし、メンテナンスをしていても極低温下では簡単に剥がれることがあります(特にポモカのシール)。緊急の場合に何度もシールを取り付ける事態が起こるかもしれません。
結局、秀岳荘シールは必要です。ただし秀岳荘シール一本だけというのはお勧めしません。そういう話しでした。

補足1:一口に取付シールと言っても、いろんな種類があります。それらの中には貼付に迫るグリップ性能を持つものもあります。今回のお話は秀岳荘シールに限った話しと理解してください。

補足2:貼付シールが剥がれた場合の応急処置としては、良く聞くガムテープによる結束よりもゴムバンドの方が有効です。ザックに二〜四本入れておきましょう。

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