山のフリーディスカッション 目次   TopPage
山小屋さん、ぱっちまん、ゆーださん等のガイドの皆さんと旦那が、トラブル事例と対処方法のフリーディスカッションをした時のメモです。きちんとまとめた物ではありませんが、各人の様々なノウハウ、経験が反映されていると思いますので参考までにどーぞ。
皆さん方で何か意見がありましたら、掲示板に投稿していただくか、旦那にメールをください。
さっそく、adaciさんから示唆に富んだコメントを頂きました(2004.12.18)。

怪我への対処 リーダーが怪我をすると、致命的なことが多い
サブリーダーの育成、連絡手段の確保(特に単独行)
 
adachiコメント:ですよね。特にリーダーの意識がしっかりしているうちはまだしも、それが失われると、正否はサブリーダーの双肩にかかりますので、現役の頃には、そんなに大げさでもない山行では、力量のある人間をサブに当てるようにしていました。リーダーはその次ですね。それで、次期のリーダーも育てるということで(分かりにくいかな?全体としてのリーダー層と、パーティのリーダーは意味が違うということで)。
スキーヤー同士の激突に注意。
スキートップによる負傷〜テレマークスキーならではの負傷。目を保護するためのゴーグルは必須。
ファーストエイドキットの準備。手当時には感染症に注意。
携帯添え木は有効。
ガムテープで怪我の部位を固定すると便利。
 
adachiコメント:でも、ガムテープはしばしばウェアのフィルムに壊滅的なダメージを与えます。なにか、もうちょっと穏やかなテープないですかね(^^::)。
  いやー、固定するほどの怪我は緊急事態ですから、そんなこと言ってられないっすよ。
レスキュー
エアレスキューについては、飛べるとは限らない。失敗することもあることを良く認識する。
 飛べないときには、救出が翌日以降になることも承知しておく
 風圧で凍傷になることがある。風圧で装備がとばされる
 遭難救助要請ーヘリが飛べない場合、翌日の救助となることを覚悟しよう。
スノーモービルやレスキューソリの場所把握と活用。使える物はなんでも使う。
スキー板でのソリの制作。ゴムバンドの有効活用を。
負傷者の降ろし方、背負う、片足で滑らす、怪我を軽めに把握しがちである。
 adachiコメント:ただ、意図してもしなくても、負傷者には「軽めの怪我」でいてもらわなくては困ることが少なくありません。予後の順調さってぇやつを犠牲にしても、彼には頑張ってもらいましょう。山で怪我するってぇのは、つまりはそういうことなんだと・・・。
シールが必要。谷への転落や滑落時には救出後に登り返すことがあるので。登り返しに必要な装備とは、アイゼン、ザイル、カラビナ・・
搬出に時間がかかると、日没後になる可能性があるので、ヘッドライトも必携。
・けが人が搬出不能な場合、エアレスキューなどが到着するまでの待機装備(テント、シュラフ、食料等)を車に積んでおくのは良いアイデアかもしれない。事故現場が車から近ければ、負傷者の搬出は無理でも、それらの装備を現場へ持って行ける。
他パーティの救出 三段山周辺ならではだが、入山人数が多いので、他パーティの救出に動く機会が多い。
 積極的に救出に協力しよう。しかし、ツアー時にはまず自分とお客さんの安全確保が最優先となる。
救助中でも法的責任が生じることがある。
 
adachiコメント:ですね。実例あり。ま、よっぽどドジこかなきゃ・・・と思っていても、えー!?なんでー!?俺にーー!!??マジー???ってな感じのお咎めが降りかかる可能性は否定できません。なんたって法律は、悪い奴を裁くのですから、誰もいないようなら、とりあへず一番近かったとか、一番年長だったとか、一番貧乏だったなんてぇやつを引き立てなきゃならんのでネ。(=^db^=)
スキー金具破損 ・テレマークのケーブルが切れる。板が折れる。山スキーのビンディングが折れる、金具がとれる。板が剥離する。
・究極の対策は、スノーシュウを携帯すること。
 adachiコメント:これはルートにもよりますが、かなり真剣に考えます。無事に帰れるなら、1キロや2キロの装備はなんとでも・・・。
・針金や工具を携帯して、できるだけ修理をする。特に、ペンチが重要。
 adachiコメント:どんなペンチを推奨なのでしょうかね?小器用にに動かすならラジオペンチ系ですが、オーソドックスペンチのあのごっつさは堪らなく頼りがいがあります。
  旦那は、コンパクトさを重視してレザーマンツールを愛用しています。http://www.leatherman-japan.com/
・スペア金具を持つ
・破損に見えて、実は氷結していただけという事も考えられる。
・板を流す(板の置き方が悪い(裏返しに置く)。板を静かに置く)
 adachiコメント:あと、全ての物をコードで連結するという「癖」もあって良いです。
  そうですね。板を流してあやうく遭難・・という話は結構聞きます。半日かけて谷底へ取りに行ったとか・・慣れないうちにはスキー場の感覚で、板を置くときについバタンと倒すように置いちゃうので、初心者注意。
  コードについては、オーバーミトン、コンパスなどにはコードを付けて使いますし、スキー板の取り扱いも、まずリーシュを付けてからという操作を徹底するとかですね。
・ストックのバケット外れは針金で修理。予備バケットを持つ。バケットの無いストックは最悪〜行動不能になる可能性あり。
 adachiコメント:枝がとれるのなら、枝とシュリンゲ・テープで応急バケットを作れます。あまり長持ちはしないので、壊れたときには、シュリンゲは間違いなく回収利用すること。
・グラスファイバー製のポールが折れた場合はテープでつなげる。アルミ製は曲がるが折れにくい利点がある。
・調整機構が壊れるトラブルも多い。経験的にはフリップ式の調整機構は壊れやすい(BDなどの)
クレバスへの転落 ・安政火口、地熱で雪の下に空洞ができることがある。
 adachiコメント:クレバスは多様な形態ですが、もっと重視して教育する必要があると思っています。スキー滑走中の転落死なども起きていますから(ヨーロッパじゃなくって日本のことです)
・前十勝へ行く途中の沢に落ちることもある。
・全層雪崩の前兆としてのクレバスもある。
・中岳温泉付近で深さ4〜5mのクレバスに落ちて自力脱出不能。ビンディングも壊れたことがある。非常に小さい穴に落ちたので、後続の仲間が気づかずに頭上を通過!引き返して偶然に発見。
滑落 ・春先、アイスバーン斜面、他の登山者との激突、木や岩への激突、
・滑落後には、ショックで動けなくなる。滑落停止の練習。
・ウエアの素材にも注意。滑りやすいウエアは避ける。
・スキーアイゼンを使わねば上れないところは、滑落も覚悟する。
・スキーヤーは、ストックを使って止める
樹木との激突 ・細い木でも、衝突のダメージは深刻。
 adachiコメント:衝突で折れた枝先が、頭部に突き刺さることもある。これも、もっと重視すべき。
  ゴーグルとヘルメットで防護していても、ゴーグルの上のわずかな隙間に枝が当たって怪我した例もあります。
・手で止めようとして骨折する。
・木を避けようとして、木を見るとその方向へ行ってしまう。
・ストックや装備が樹木に引っかかって転倒する。特にストックがブッシュに絡み・取られると、腕を脱臼しやすい。防止策としては、ストラップに腕を通さない。強い力がかかるとストラップが抜けるタイプのストックを買う。
 adachiコメント: 「雪崩リスクマネージメント」の著者はストラップを切ってしまっていましたね。少なくとも、日常的にはストラップは使わない方向に持っていくべきでしょう。
  そうしたいのは山々なんですが、深雪を滑るときには転倒時にストックが行方不明になることが多く、ストラップを切り取っちゃうというのはちょっと・・
・樹木にぶつかる瞬間、身を捩ってザックを木に当ててダメージを少なくさせた例あり(ぱっちまんだけど)
・ハイサイドを食らって空中を飛んで木にぶつかり重傷になった例も・・こうなると避けようがない。
・ツリーラン時には、木の手前でターンしようとせずに、木をポールに見立てて、通過してからターンする意識で・・
・クマザサが鼻の穴に入って、大鼻血・・
・浅い雪の下の倒木、ループ状になったブッシュやハイ松にも注意
凍傷 ・ションベンに失敗ー局部を濡らして・・下山。
・目出帽・フェイスマスクは必携。
・鼻先、手先、足先が凍傷にかかりやすい。耳も。
・温泉が近くにあると、軽い低体温や凍傷に有効。
・顔の凍傷が一番多いので、本人に凍傷の自覚がない場合はフードを無理矢理でも被せる。
 adachiコメント: まぁ、顔の凍傷で死んだヤツはいませんから・・・・顔を切断したやつも・・・(^^::)。一月ばかり、社会的信用を損なうという程度のリスクで・・・。
・耳の凍傷を防ぐためにピアスは外す。
道迷い ・ポイントではなくて、全体でルートのイメージをつかむ。
 adachiコメント: 全体を解析してポイントを抽出し、ポイントを統合して全体に至る。カッコつけて言うなら、下降と上昇です。
・コンパス、地図の紛失も致命的。
 特に地図は風で飛んでいく。予備マップの携帯を
 adachiコメント: リーダーの地図が飛んだのなら、メンバーの地図を巻き上げます。(=^db^=)
・GPSの有効活用頼りすぎは危険。しかし、非常に有効。
・コンパスは、ビーコンの影響で狂い直らない場合がある。
 adachiコメント: 電磁機器と隣り合わせは避けることですね、どちらにしても。・・・ケータイはどうかな?
  携帯電話でコンパスが狂ったという話は聞かないですね・・
・コンパスが狂って南北が逆転することがある。
 adachiコメント: 一つ持っています。製造ミスかと思っていましたが、そんな破廉恥なことよりは、帯磁の逆転と考えるべきでしょう。
病気 ・持病、関節系、心臓病、糖尿病、頭痛、精神障害等・・に注意。
・薬を忘れただけで、精神的に不安定になるケースも。
・凍傷とは別に、冷たい空気で肺をやられる事もある。
 adachiコメント: 冷たい、というよりは乾燥が問題と思っています。ですので、肺の以前に気道がやられるのでは・・・。乾燥で雑菌が活発になるのと、表皮細胞の膜が機能不全に陥る為と認識します。
  なるべく鼻で息をするようにしたいところです。
・基本的な知識と理解を・・(特に精神障害)
疲労 ・酷いラッセル(先頭は、どんどん代わる)
・過剰な荷物(沢山の装備が悪いんじゃなくて、自分の体力とのバランスの問題)
・他のメンバーの待ち疲れ
 adachiコメント: (爆!) まったくです。悪いが、状況が許すときはあたしは、メンバーより先にどんどん進んで、どっか適当な場所で休憩しながら待ってます。
  あまりそれをやると、「取り残された」という意識が生じて遅れている人のメンタル面でのダメージが大きくなりますよ。
登るときのスリップ
 adachiコメント: スリップしないような教育は可能。これだけでパーティーの巡航速度はかなり改善。(すぐに出来るとは限らないが)
  とりあえず、取り付けシールの人には貼り付けシールへの転向を強く勧める。ハードバーンにはスキーアイゼンを使うように指示するのも有効
・ハンガーノックに注意。こまめに食べる(チーズかまぼこ、練乳、麦チョコ、スニッカーズ、フルーツグラノーラ、メープルシロップパン、ナッツをペットボトルへ入れる、サラミ、ビーフの大和煮、干しいも、みがきニシン、スルメ、バナナチップ、キットカット)
・張り切りすぎ、夏でも疲労凍死することがある。
・疲労させないーコース取り、適切な休憩ー精神面にも配慮する。
・リーダーは、常に体力の余力を残す。
天候 ・予測は難しい。これを前提に考える。
 adachiコメント:予測に基づいて行動する訳ですが、現場状況のズレを絶えず検出し、事前予測を補正しながら行動するということに。(その前提は、予測段階で、幾つものオプションを備えていることです。ズレは、二次的、三次的なオプションへの環境の遷移ととらえます。)
・インターネットが便利。常に最新の予報を。
・前十勝では、風向風速が分かる噴煙が目安となる。
・商業ツアーでは、天候で中止することは難しい。
・気象でコースを変えるのが一番。当初の行動計画にこだわらない。
・天候が悪化したらとにかく樹林帯へ逃げる。どんな天候でも樹林帯なら大丈夫。
 adachiコメント:ですね。樹林高度は登山者の味方です。・・・ただ、ルートをややこしくするのがちょっとネ・・・。
・冬場の雨が最悪 決して衣類を濡らさないこと。
・視界不良(ルートロスト、激突、転落)、風、積雪、快晴すぎて雪目になる(サングラスをする。症状が進むと風景が黄色く見えてきたり、火花状の閃光が見えるようになる。白内障の原因となる。) 症状が悪化すると現場ではどうしようもない。
お勧めの下着 ・ノースフェースのが高いけど快適
・モンベルのは臭い。
・ノースケープも良い。
・表がウール、中がシルクが最高。化繊は信用ならん。
・ブレスサーモ、手袋には良いけど、下着にはダメ
・ロビロンが良い。
・靴下はスマートウール
・時代は、ウール!やっぱりウールが一番らしい・・
・ブーツがサーモインナーを使用していると暖かい。フィット感の向上だけではない。お勧め。
アイウエアに関するトラブル ・ゴーグル凍結・コンタクト落とし、めがね破損、紛失
・対策としては、とにかく全部の予備を持つ。
・凍結したゴーグルも、液状の曇り止めの塗布で復活することがある。
・猛吹雪でゴーグルのミラーフイルムがはがれたことがある。
・ファン付きゴーグルは有効だが、猛吹雪時にはファン部から雪が入って困ったことがある。
・ゴーグルの色は明るいピンクが良い。まぶしさ防止よりも、吹雪の時の視界確保を優先。
高山病 ・急激な高度の変化。自覚症状があまりない。疲れる〜歩けなくなる。
・あくびばかり出る。おう吐する。旭岳姿見の池でも高山病になった事例がある。
・三段山でも、高山病になる。経験では救心が結構効いた。
・病院での治療は点滴・・
・標高1500m程度でもなりうる。
 adachiコメント: 低高度での高度障害は、それとしては自覚されにくいですよね。また、他の要素とも連動しあって発現するので・・・下界での過労とか、内臓の潜伏的な病状とか・・・。
 基本要因は、やはり低酸素ですか。それに内臓諸器官の膨潤?と圧迫による神経系の反応低下。
雪質 ・雪崩ー弱層試験を積極的に。
・クラストに注意。転倒〜怪我しやすい。
・小さな雪崩でも埋没したら危険。
食料、飲料水の凍結 ・おにぎりは凍ると食べられなくなる。パンなど凍結しない食料を携帯するか、体に密着させて凍らせない工夫を
 adachiコメント:八甲田での帝国陸軍の遭難で生き残った、積雪地出身の兵士は、おにぎりを胸に抱いていた、なんて話もありましたね.
 だから、インナーウエアには胸ポケットがたくさんあるタイプを希望しているんですが、最近少ないです・・
・飲料水の凍結〜テルモスにお湯を
低体温症 ・特に男性は、最後まで「大丈夫」というので、信用できない。
・疲労させない、なったら加温、熱いお茶を飲ませる、着替え、保温させる。
・レスキューシートの活用、摩擦は行わない。
・汗をかかせず、冷やさず・・適度なペースで。
・予備の衣類として、手袋、靴下、フリースシャツ、ツエルトの中で着替えさせる。
同行者のトラブル・パニック ・装備や技量の差がトラブルを招くこともある。
・仲間割れの要因は、けんか、パニック、わがまま。
・リーダーは目をかける、声をかけ続ける、危機の感じ方に個人差がある。
・場の雰囲気をコントロールする。
・ハイになっている人は怪我率高し。
・パニック時には、おだてる、気をそらす、笑う。ドラマみたいな平手打ちはイカンよ。
・余裕を見せる、しゃべりまくる。
 adachiコメント: 大事です。というか、在る余裕はしっかり見せます。
 余裕が無いときは、・・・・まだ経験していないので・・・きっと、頬が引きつって、声が上ずるだろーなー・・・・イヤ、実は自覚していなかっただけで、現実にそうだったのかも・・・・。

 ルートロストで「すわ遭難か!」とパーティがパニックに陥りかかった時に、リーダーがおもむろにタバコを取り出し、うまそうに吸い出しました。その様子を見て、皆が落ち着いた事がありますね・・余裕の演出。
・先頭は、何度でも振り向いてメンバーの動きを確認してペースを調整する(これ出来ない奴は、先頭を行く資格無しです)。
・無理な行動予定に注意。登り時間は予想がつきやすいが、下りの時間予想は難しい。スキーの技術によっては、歩くよりも時間がかかることがある。 

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