冬山の残置テープはいらない
2003年12月18日(木)
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三段山周辺で見られた残置テープ(枝などに標識テープをぶら下げて残していくこと)について、一昨年からその是非を巡って熱い議論が交わされてきました。こちらは、その要約です。



事の始まり:
三段山周辺で、毎年こんな光景が見られるようになりました(下の写真参照)。
蛍光ピンクやブルーのビニールテープが、白銀荘から山頂直下まで、あるいは周辺の樹林帯に大量に吊してあります。
取付間隔は短いところで1メートル(!)。長くて10メートル。
樹林帯から上では、とりあえず目に付く灌木すべてにテープをとりつけてありました。
付けられ方はかなり無秩序且つ大量で、うっかりするとナマコ尾根への深い谷へ迷い込まされられるようなものもありました。


我々は、そのような残置テープを見つけたら、かえって道迷いを誘発する恐れがあり危険と判断して、必要最小限のものを除いてほとんど全部撤去しています。
しかし、枝に堅結びで取り付けてあるものが多く、取り外しにとても苦労します。どうしても取れず、止む終えず枝を折ったものもあります。
取り外したテープの本数は、かぞえきれないほど大量です。

どんなに酷い気象条件下でも、こんな間隔の大量のテープは必要ないので理解に苦しみます。しかも自然分解しないビニルテープをこんなに残置するなんて、信じられません(私たちは、テープを設置する際には紙テープを使い、原則的には使用後撤去します)。

特に白銀荘付近の樹林帯には、最近このような形で大量のビニルテープが吊される事が多く、地元のガイドの方が除去にとても苦労させられています。一回の除去でスーパーのゴミ袋が一杯になるそうです。直ちに止めさせないと、この行為は山にゴミをまき散らしているだけです。どなたか、なにか妙案はありませんか?(泣)

この意見を掲示板に掲載したり、MLに流したりしたところ、以下の意見が寄せられました。
>標識テープを付けている人を見つけても、「私たちの道しるべの為に付けるんだ」と言われたら、それ以上は注意できない。

これは、まったくその通りだと思います。
ここで問題となっているのは、標識テープを残置していく事ですから、
「下山するときには取り外しますよね?」と問いかけて、「帰りに取っていきます」
と確認さえ取れればそれで良いと思います。
もし、標識テープを取り付けていた人が、「他の人為、もしくは再び自分が登るときの為に残していく」と答えたら、
1.もし、誰も回収しなければ、最終的にはタダのゴミとなる
2.山の景観を損なう
3.よほど明確にルートを指し示すものでないかぎり、かえって他の登山者が混乱する
4.残雪期には、完全にルートを迷わせる原因となる(つまり、余計なお世話)
くらいの説明をしてあげれば良いと思います。

状況が改善しない場合には、白銀荘に以下のようなポスターを掲示してもらうことも考えています。

●樹木へ標識テープ(蛍光ピンク・ブルーのビニルテープ)を取り付けたまま残していくことはご遠慮下さい

最近、三段山周辺の樹木に標識テープを過剰に取付けて、そのまま残していくケースが見られます。ビニール製のテープは自然分解しませんので、これは山にゴミをまき散らしているのと同じ行為です。
登山者が取り付ける標識テープは、原則として使用後は取り外して持ち帰るのがマナーです。
広範囲に取り付けられた標識テープは、かえって他の登山者を混乱させる事があります。
どうか樹木へ標識テープを取り付けて、そのまま残していくことはご遠慮下さい。

三段山の自然を愛する者一同より



誰がなんのために何時付けたか分からない目印テープは危険です。
三段山に吊されていたテープには、そのまま鵜呑みにして進むと、雪崩の多いナマコ尾根方面の谷へ迷い込む可能性の高いものがありました(即刻撤去しましたが)。
春山を登っていて、厳冬期に吊されたテープを辿って正規の登山道から逸脱して道に迷った方もいます。
私はこれらを単に回収をさぼっただけの”屑テープ”と呼んでおります。
これらの”屑テープ”は、林業関係のお店で売っている蛍光ビニルテープの普及により、より問題が根深くなっています。安いので気軽に残置して、耐久性が高いのでいつまでも残る・・・・
もちろん、適切な目印テープもあるのでしょうが、問題は、それらの適切なテープと”屑テープ”と見分けがつかないという点なのです。結局、どのテープも信用できないということになり、テープは残置しないという結論になります。
あまりにも登山者がテープを頼りにする姿勢も、残置テープ正当化の理由にされそうです。自分が付けた目印以外はあてにしない、信用しないことが一番です。

かなり以前(10年以上前の話)、私が積雪期に新得側からトムラウシへ向かっていたときに、樹林帯に延々吊されていた目印テープを頼りに登ったことがありました。残置されたものだと思って、自分たちはテープを吊しませんでした。
すると・・・行程半ばで山岳会の人達が降りてきて、そのま目印テープを回収しながら下山していきました(^_^;)。
当然、帰路を示すテープを失った我々は、トレースを引き返す事になりました・・・この時はテープをあてにして行動した自分を恥じて大反省したものです。当時からきちんとテープを回収していたその山岳会は偉いと思います。

この意見には、以下の反論がありました。
>目印テープは、親切心から設置されるものが多く、それをあてにする初心者も居る。感謝すべき部分は無いのか?残置という言葉には悪意を感じる。

私が考える目印テープの区分け(冬山において)
●駄目な目印テープ
1.あきらかに過剰な間隔で吊してあるもの
2.意図不明なもの

●良い目印テープ(理想的にはこれも無い方がいいと思うけど、まあ許容できる範囲ということで)
1.迷いやすいポイントに適切に、最小限の間隔で吊されていること
2.なにを意図しているのか、明確に分かること

この区別には、残置(私は単に”残しておくこと”の意味で使っています)した方の思惑は関係ありません。親切だろうがなんだろうが、ダメなものはダメなのです。
駄目な目印テープにおいては、設置した人が親切心で行ったものであっても、それはあきらかに「おせっかい」なのです。しかもその事を残置した当事者に伝えるすべがないのです。はがゆい話しです。
さらに付け加えると、それを撤去する者にとっては、「余計なこと」以外のなにものでもなく、感謝する気持ちなどとても抱けません。誰でも一度、100本ばかりテープの撤去作業をしてみればわかると思います。
さらにさらに付け加えると、親切心などとはまったく関係なく、単に持ち帰るのが面倒で残されたテープの存在も私は否定できません。
そもそも、目印テープをあてにしないと入山できないような初心者は、冬山へ入る資格はありません。そんなものをあてにしないで、きちんと読図してルートを見つけていくようになるべきです。初心者には、「テープは自分で吊して、自分で持ち帰る」と指導しましょう。

目印テープは、設置に値する明確な理由、慎重な検討がなされて、はじめて残置できるものだと考えます。
景観に与える影響、誤認の可能性、撤去されるときの手間を考えると、誰もが気軽に、軽い親切心で残すようなものでは無いという認識が欲しいです。
良い目印テープは、その山域にかなり精通した人にしか取り付け出来ないものでしょう。
地元の山岳会などが検討した上で設置できるレベルだと思います。登山道への看板設置のようなものだと考えて下さい。

私には決して冬山初心者を軽視したり、おとしめるような意図はありません。
むしろ逆です。変な目印テープに惑わされて遭難したりすることがないよう、心から心配しております。


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