山へ犬は立ち入り禁止!?
2000年3月27日(月)
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三段山で愛犬と山スキーを楽しんでいる方と一緒になった際、私は山行の楽しみ方の多様化の好例として好意的に取り上げた記事をHPに掲載しました。
私も将来犬を飼ったら冬山へ連れて行きたいとまで思い、素直に感動していたのですが、複数の方から犬を国立公園内へ持ち込むのはルール違反だとの指摘や、国立公園の入り口で犬持ち込み禁止の看板を見たとの指摘を受けてしまいました。
私は止む終えず問題の記事を削除して、やけ酒を飲んだりしていましたが、なぜ犬が規制されるのか納得できなくて少し調べてみました。

まず、北海道環境生活部環境室に聞いてみました。
”犬の持ち込みについて 自然公園法・自然環境保全法では、家畜の放牧はだめだが、伴侶動物はは禁じていない。乗入れ規制区域内では、犬ぞりは馬車と同じで駄目だが、犬の持ち込みは特に規制されていない。 それとは別に犬と一緒に山へ入る際には、熊の問題があるので危険だ。 訓練を受けていない犬が熊と遭遇すると、むやみにほえて熊を刺激した後、飼い主に逃げ帰ってくる可能性があるからである。 犬嫌いの人もいるので、利用者間の問題もあるだろう。つまりマナーの問題ではないか?”

次に環境庁にも聞いてみました。
”法的にはまったく犬の持ち込み規制はありません。ただ、寄生虫の問題もあるので、持ち込まないように「お願い」しています。”

次にパークボランティアの方にも聞いてみました。
環境庁の見解に加えて、”犬の糞が植生に悪い影響を与えるから。”
ふむふむ。いろんな理由があるんですね。

犬を規制する理由と思われることを整理してみますと、
1.ヒグマを刺激するから
これに関しては、犬と一緒に羅臼岳に入山しようとした方が、登山口で止められたという話も聞きました。たしかにヒグマの生息する山域では問題になりそうですが、それ以外の山域や冬期間は問題になりません。
2.寄生虫の問題
エキノコックスの幼虫が寄生したネズミを食べたイヌにも成虫が寄生することがあるそうです。しかし、これは野ネズミのいる場所ならどこでも危険性があるので、特に公園内に限ったことではないですね。
3.糞の後始末の問題
これはマナーの問題ですね。下界と同じように飼い主が回収すれば良いでしょう。それに、現在はトイレ外の人糞の方が遙かに影響が大きい状況ですし。

これらの理由では、公園で犬を全面的に規制するのには少し無理があるようです。冬期間ではほとんど問題が起こり得ないこともわかります。
どうやら、飼い主のマナーに問題が絞られるようです。
実際、HYML(北海道山メーリングリスト)に、この問題を投げかけたところ圧倒的多数で、「犬禁止とする」になってしまいました。
主に夏山で、飼い主のマナー不足が原因で、とても嫌な目に遭っている方が多いようです。
私は山で犬がらみで嫌な経験をしたことが全くなかったので、正直あまりの拒否反応に驚きました。このことに関しては私の認識不足がありました。

私なりの結論:
現在は国公立公園での犬の規制に関しては法的な根拠はありません。看板で犬禁止と記載されていても、それは「お願い」にすぎませんので、犬は入山できます(強引に入るのは感心しませんが)。
しかし、「飼い主の適切なモラルと犬の適切な調教がされている」ことが、犬の入山の前提条件になりそうです。このままの状況では、残念ながら犬の入山規制?も将来止む無しになる可能性大です。
将来、法で規制されないためにも愛犬家の方は、これ以上一般登山者や観光客の反感を買わないように、人の多い夏山等では状況に応じて犬にクサリ等の規制器具を付けるなどの、細心の注意を払ったほうが良いでしょう。

今回つくづく、日本の山は狭いなあ(キャパシティが小さいなあ)と思いました。犬を許容できないほどに・・・
でも、人の少ない冬山では大きな問題はなさそうです。海外の自然公園はどうなっているのでしょうね?
ちなみに、何故犬と限定して持ち込み禁止なんだ?と役所の人に聞いたら、
「だって、猫を持ち込む人はいないでしょ?」と言われました。なるほど・・・

追記(01.07.15)
宮崎県在住の遊也さんという方から、この問題に対して、ある事件の報告が掲示板に寄せられましたので、以下に記します。
この事について、私は当初、犬と飼い主の双方に問題があった特殊な事件に過ぎず、犬問題一般を問うような事件ではないと解釈したのですが、掲示板でいくつか意見交換がなされた結果、「やはり人の多い山への犬の入山はまずいね。」という結論が出されました。
事故のあった祖母山では、下のリンクで愛犬家へ注意を呼びかけています。
http://www1.ocn.ne.jp/~sobokata/dog.htm


> 昨日、九州のある山で、残念なアクシデントに遭遇しました。あるご夫婦が飼い犬を連れて登ってこられました。
ところが、梯子場で怖がって前に進まなかったワンちゃんをご主人が無理やり行かそうとしたため、
ワンちゃんが暴れて両腕を噛まれて負傷されました。
 ワンちゃんは大型犬でしたので、かなりの出血だったようです。
たまたま山頂にいらした登山者の中に、看護婦さんがいて、応急処置をしていただいたとの事。
その後、救助要請、防災へりの出動となりました。
 ところが、それでもワンちゃんをロープにつながず、放したままなのだから困ったものです。
 犬と共に山を歩く、それは楽しいでしょう、ご本人たちは。でもまわりの方たちはどうでしょう。
 今回は梯子場から転落されることもなく、飼い主ご本人の両腕の怪我で済みましたが、
近くに犬が苦手な人がいて、犬が暴れるのに驚いて、慌てて梯子から転落、
などということになっていたら、飼い主の方はどう責任を取られるのでしょうか。
 犬と一緒に山に行かれる皆様、そういうことも有りうることを考えていただければと思います
私自身は犬好きですので、さほど気にならないのですが。
 昨日の事故を見かけた、犬が苦手な方は、よりいっそう犬を恐いものだ、と思われたでしょう。
 残念なご報告ですが、愛犬家の皆様、それ以外の皆様にも考えていただきたい問題なので、
 他のHPの掲示板にも同じ内容で書き込ませていただきました。

追記(01.10.10)
アメリカでの犬事情も知りたいと思っていたところ、コロラド在住のわださんから以下のメールを頂きました。
やっぱり、アメリカでは犬に対して寛容ですね。日本では絶対的なフィールドの狭さと人の多さが問題なのかなあ・・(あと、犬と人の躾)

>コロラド、ボルダーにはすぐ近くに国立公園、国有林があって、
ハイキングには事欠かないのですが、日本とまったく違うのが犬を連れている人の多さです。
この間、4000mほどの山に登ったのですが(とは言っても、3000mくらいから始まる簡単なルート)、
そこで会ったパーティの6割くらいは犬を連れていましたね。
だいたいはゴールデンリトリバーとかの大きな犬です。リーシュに繋ぐように、登山口の看板には書かれていますが、繋いでいない人も多い。
でも、多くは非常によくしつけられていて、登山者に絡んだり、ほえたり、やたらと糞をしたり、他の犬とけんかしたりしません。
実際、犬の糞は、登山道で一度も見ませんでした。
こちらの山でもトラブルがないわけではないと思いますが、基本的に犬のしつけが日本とはレベルが違うし、
家族の一員という意識なので、山に連れて入るのも自然な成り行きなのでしょう。
以上、わだ@じゃどーずさんのメールより抜粋。


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