icon 4 chord
旦那の感想と夷films 関口さんの回答
2004年11月4日(木)
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画像提供:夷films
2004年10月18日に 夷films icon 4 chord上映会が富良野で行われました。
前半の、ローカルビデオ上映、スライドショーの後でicon4の上映が行われ、会場は超満員で大変盛り上がりました。
上映会の直後に、旦那はicon4のインプレッションをBBSへ掲載しましたが、発売前の作品への論評はいかがなものか?との指摘を旦那の友人達から受けて削除しました。
その後、ビデオ制作者である夷films 代表 関口さんへ旦那のインプレッションをメールで送り、意見交換を行うことができました。
以下は、そのやりとりの内容です(若干の文章補足・校正を行いました。また、本筋以外の部分については削除したところもあります)。

■旦那からのメール:
夷films 関口さんへ、
上映会でicon4を見た感想を送ります。失礼な部分もあると思いますが、見た直後に率直に感じたことを書きました。一度しか見ていないので、勘違いや間違いがあるかもしれませんが、ご容赦下さい。

相変わらずのロケーション、カメラの構図の美しさにため息が出ました。
特にスロープを滑るスキーヤーの超ロング撮影に度肝を抜かれました。ヘリを使わずに、これだけの画を揃えるのは並大抵の労力ではなかったと思います。
BCに的を絞った構成も好感が持てました。ただ、せっかくヘリを使わないBCスキーなのに、登りのシーンがほとんど無いのは残念でした。パートとしては、ウズベキスタンのパートが一番良かったです。
滑り手も素晴らしい。スキーヤーが本当に寒気がするほどのスピードで飛ばしていて驚きました。まさしく命懸けで滑っていることが伝わってきます。
ボーダーが吹き上げるスプレーも印象的でしたが、今回はスキーヤーのスピードが一番印象に残りました。

連作のプレッシャーは大変なものだったと思います。真面目に完成度を高めていこうとする姿勢が伝わってきました。滑り、撮影、共に文句なしです。
ただ編集面で、BGMのせいか上品で綺麗な画ばかりを繋げたせいか、全体的に平坦な印象を受けました。また、1カメ、2カメと切り替えて見せるような手法による臨場感が無くて残念です。
スキーヤーは、すべて一人ずつ滑る様子を見せていて緊張感はあるのですが、逆に見せ方のパターン化が気になりました。また、ロングが多くて画が客観的すぎると感じました。
上映会冒頭の挨拶で、「今回のビデオは、あまり冒険しないでオーソドックスに作った」とおっしゃっていましたが、その時に感じた予感が悪い方で当たったという感じです。
前作の二代目・高橋竹山(津軽三味線奏者)とのコラボレーションみたいな試みや大胆な撮影法や編集など、少しでも良いから何か新しいものが欲しかったと思います。

なんといっても、テレマーク派としては、テレマークスキーのシーンが減ってしまったのが、なんとも残念でした。ただし、アルペンと比較するとテレマークの限界の低さは、やはりいかんともしがたい現状も分かります。

作る側と見る側の距離感について、
遊び心のある画がほとんど無いためか、スキーヤーの感情や個性が伝わりにくかったです。スキーヤーと視聴者の間に距離感をもってしまいました。イシバシ君のライフスタイル紹介がその役割を担うはずなのでしょうが、かっこよすぎて・・
最終的には「どこか遠くで 誰かが 凄い滑りをしている」という印象を受けてしまいました。カタログ的すぎて、ドラマ性が無いというか・・
感情移入して盛り上がりきる事ができなかったのは、こちらの気の持ちようのせいだったのかもしれませんが、同時上映された「ゆーださん」のアマチュアビデオが、関口さんのビデオを見て不満に感じた部分を補完していたように思いました。

いろいろ生意気を言ってすみません。これからのご活躍期待しています。
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三段山クラブ 旦那

■夷films 関口さんからの返事:
早速メールを頂き恐縮です。
制作者としては、こういったメールを読むのは楽しいですよね。
せっかく長篇の感想を頂いたことですし、また明日DVDが届いた後の出荷作業を前に多少時間があるので、じっくりと返答させていただきます。
面倒でしたら、流して読んで頂いて結構です。


>BCに絞った構成は好感が持てました。ただ、せっかくヘリを使わないBCスキーなのに、登りのシーンがほとんど無いのは残念です。パートとしては、ウズベキスタンのパートが一番良かったです。

今回に限らず、ヘリコプターを使用できる環境と予算があれば、どんどん利用してきましたし、今回、ヴァルディーズとウズベキスタンはヘリコプターでの撮影です。
今回のパイカグレイシャーや昨年のグリーンランドの様な斜面は、滑る事も勿論ですが登る事が非常に難しいようです。1つの斜面に長い時間をかけることで、集中力はヘリコプターを使用した場合の比ではありませんし、自分で登って斜面を滑る行為の限界に挑戦するのも、意義があるし非常に面白いです。でも一方で”滑り”の質、内容を高めることも重要だと思います。
できる限り多く経験することで、レベルを上げる努力をすることも大事ですよね。それにはヘリコプターはもってこいです。
どちらが良い、悪いということではなく、どちらもバランス良くこなせたら一番良いと思います。


> 連作のプレッシャーは大変なものだったと思います。真面目に完成度を高めていこうとする姿勢が伝わってきました。滑り、撮影、共に文句なしです。
> ただ編集面で、BGMのせいか上品で綺麗な画ばかりを繋げたせいか、全体的に平坦な印象を受けました。
> また、1カメ、2カメと切り替えて見せるような手法による臨場感が無くて残念です。

う〜ん、プレッシャーはあまりないです。
平坦なのは以前から変わりないと自分で思っています。編集していると少し色気がでてしまう時もありますが、今回はいつもより以上にその辺りを抑制しました。
編集やBGMであおらなくても、十分にすごいパフォーマンスだと思っているし、個人的にそういう方法であおるのは好きではありません。


> スキーヤは、すべて一人ずつ滑る様子を見せていて緊張感はあるのですが、逆に見せ方のパターン化が気になりました。また、ロングが多くて画が客観的すぎると感じました。

対斜で撮影した大きな斜面のものは、どちらかといえば滑り手と撮り手のエゴ丸出しな部分かもしれませんね。あの斜面のライン取りやスピードに共感できる人はほとんどいないと思います。また、できる限り最初から最後まで収録したいので、長過ぎてしまいますよね。
でも、ようやく彼等のポテンシャルに見合った場を提供できるようになって来たことは自分なりに嬉しく思っています。
まあ、少し我慢して観て下さい。辛いようでしたら早送りでお願いします。


> 前作の二代目・高橋竹山とのコラボレーションみたいな試みや大胆な撮影法や編集など、少しでも良いから何か新しいものが欲しかったと思います。

ああいった試みは、本当に偶然の出会いから生まれるものなので、残念ながらそう毎年々できることではありません。
もともと新しさは追いかけていませんが、特に今年は自分がこれまでに得たものをさらに洗練させようと心掛けていたので、余計に”相変わらず”という印象だったかもしれません。


> テレマーク派としては、テレマークスキーのシーンが減ってしまったのが、なんとも残念でした。
> ただし、アルペンと比較するとテレマークの限界の低さは、やはりいかんともしがたい現状も分かります。

それは十分理解した上で、出演してもらっているので気にしていません。
もっとテレマークの良さを引き出せるようなロケーションや状況を作る努力が必要ですね。


> 遊び心のある画がほとんど無いためか、スキーヤーの感情や個性が伝わりにくかったです。スキーヤーと視聴者の間に距離感をもってしまいました。イシバシ君のライフスタイル紹介がその役割を担うはずだったのでしょうが、かっこよすぎて・・

なるほど。
ジンちゃんのライフスタイルの箇所はかっこ良くしよう、というのではなくて、狙いは、かっこよくする人じゃないのにかっこ良くされているおかしさだったのですが、なかなか伝わらないですね。ジンちゃんの嫌がる顔を想像しながら編集してました。
あれ、本気でやってたらかなりヤバイですよね。


> 最終的には「どこか遠くで 誰かが 凄い滑りをしている」という印象を受けました。カタログ的すぎて、ドラマ性が無いというか・・
> 感情移入して盛り上がりきる事ができなかったのは、こちらの気の持ちようのせいだったのかもしれませんが、同時上映された「ゆーださん」のアマチュアビデオが、icon4を見て不満に感じた部分を補完していたように思いました。

これは一番大事な問題ですね。
これまでどうしても中だるみしてしまう傾向があったので、その辺りを引き締めることをまず、第1の目標にして、そのために、無理にこじつけた様なライフスタル系の映像をできる限り削ることにしました。
リアルさはカメラを向けられた時におどける仕草やわざとらしさにはないと思っています。だから、滑りではない普段の姿を撮影する時は、できる限り撮影している事を悟られずに、自然な表情を収めたいと思っています。なかなかうまく収められず、苦労していますけど。
どうも、テレビのバラエティー番組の真似事みたいなことになってしまうのは好みではないようです。

実は昨年も同じことを考えたのですが、今後はこれまでのような構成ではなく、違ったものにしたいと思っています。
自分の力不足が原因で、なかなか実現できないのですが、次に作品を制作する機会があったら、実現させるつもりです。

かなり細かく観ていただいているので、とても参考になります。
”すごく良かったです”という声よりも、こういった意見の方がずっと嬉しいですよね。
ありがとうございました。

■Web掲載の経緯:
旦那の不躾で思慮の浅い質問にも、関口さんは丁寧に回答してくれました。
旦那の周りでは、iconについて意見を交わされることが多いので、そういった人達にも制作者の意図を伝えたいと思い、
「こういう制作者のメッセージというのは、なかなか見る側には届きにくいので、今回のこのメールのやりとりはWebに掲載したいくらいです」というメールを関口さんへ送ったところ、
「今年、ブラボースキーという雑誌で撮影日誌を連載させて頂いており、より楽しんでいただけるよう、補足説明のようなことをしていますが、もしも興味を持って頂けるようでしたら、今回のやりとりを三段山のウェブに掲載していただいても構いませんし、皆さんの御意見も伺えたら非常に参考になります。」
というお返事を頂いたので、こちらへこのような形で掲載することにしました。
例えば、ヘリについて旦那はてっきりベースまでの輸送に使われただけだと誤解して質問したりしていて恥ずかしいのですが、そのへんを含めてそのまま掲載しました。
メールの内容、icon4パッケージ画像などの提供を快く承諾してくれた関口さんに感謝致します。

icon4に対する感想・意見など、ぜひ関口さんの方へ、または三段山掲示板の方でもよいので、どんどんお寄せ下さい。
EBIS films:
http://www.ebisfilms.jp/index.html

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