2003年3月12日(水)
Canada戦記
くま@ワシントン支部より

Canadaまで行って来ました。
場所はカナダ西部、カナディアンロッキーの真ん中のRevelstokという街の近郊です。
なお、現地では今年に入りスキーの学生一名が雪崩で死亡。最近亡くなったクレイグケリー
はこの近くで雪崩れに遭遇したようです
街の様子はこんな感じです(写真1)。繁華街が一本のみという規模の街です。
町の規模の割に山用品を扱う店が5軒もあったのは土地柄でしょうか?
私自身はお土産にオルトボックスのロゴの入った救急セットを買いました。
普通のスポーツ店にこんなものがおいてあるのも興味深いです


写真1

写真2

写真3

写真4
ツアーはCMH(Canadian Mountain Holiday)社というものが主催しているもので、一週間かけてヘリコプターをリフト代わりに使い近郊の山域をすべると言うものです。
詳細について興味のある方は下記のCMH社のHP(日本法人あり)をご覧下さい。
なお、CMHでは今回参加したレベルストークエリアのほかにもいくつかのヘリスキーを展開しています。(全部で12箇所程度)人数がまとまっている場合はプライベートも受け入れているようです。金次第では個人単位でも参加できるようですが、この場合は気が遠くなるほど高額なはず。
ヘリはこんな感じです(写真2〜4)。
日本から今回のツアーに参加した場合の参加費は航空券込みで65万円…。
私は聞いた時には気を失いそうでした。アメリカから参加した私にしても40万円強の金額を強いられています。
故に参加者全般の年齢層は高い傾向があります。

写真5

写真6

写真7

写真8
今回は現地の雪事情が悪く、満喫というわけには行かなかったのが残念です。
”粉”はほとんど無く、樹林帯もガリガリと言う惨状でした。
オープンスロープになっているところでは風でパックされており、バキバキと音を立てながら滑走しておりました。
聞くところによると例年の三分の一の積雪量しかなくガイドもコース取りに苦労しているとのことです。添付の写真にあるように天気は超絶にスバラシかったのですが、問題はこれがすでに3週間近く続いていて新雪が”無い”と言う点です。
もっとも、これで雪質が良かったら気絶しそうなほどの一週間が約束されると思います。
リピーターの数も半端でなく多いようです。
なお、雪及び天候がひどいと逆にヘリは運行中止になりますから、それはそれで痛し痒しですね。

参加期間(2月8日〜2月15日)
カナダのカルガリーに集合し、それぞれの山へバスにて移動。
わたしが参加したレベルストークエリアの参加者は32名。
ウチ日本人は建国記念日の関係から多く10名。
その他はアメリカを中心にスイス、フランス、オーストリア、ドイツと欧州系の比重が高い。
全参加者の中でテレマークの参加は私のみ。ボードの参加者はなし。
ツアーの会話は英語オンリーです。フランス人のガイドがフランス人にフランス語でレクチャーするなどという光景は見られましたが、基本的には英語だけです。

写真9

写真10

写真11

写真12
基本的な日程
一グループを8名前後で編成し、これにガイドがついて一つのヘリコプターに乗り込む。
初日にはアバランチビーコンの練習とヘリコプターの安全講習が行われた。
朝、ホテルを出て車にて近くのヘリポートへ向かう(写真11)。迎えに来たヘリに乗り込み山へ。
大体標高600M地点から一気に標高2,600M付近まで運ばれてスキー開始。
今回のツアーでの最高標高地点は2、900M。
コースにも依るが、1本が標高差500Mから1,000M前後。
1本滑り降りると、スキーを外して迎えに来たヘリに乗り、再度上昇し別のコースへ。これを繰り返す(写真12〜13)。

写真13

写真14

写真15

写真16
一日に大体7本から9本の滑降を行う。
4時近くに滑降終了。迎えに来たヘリに乗りホテルのある街まで引き返す。
これが大体の日程です。
昼食はやはり麓からヘリが運んでくるサンドイッチと暖かい飲み物が山の中で食べられます(写真14〜16)。
また、昼食時などで滑走を切り上げて午後からホテルに戻るということも可能です。
なお安全装備としては一つの班に共通装備として無線とゾンデ棒、シャベルの入ったザックが一つづつ渡されて、班の人間が交代しながらそれを担当します。
なお共通装備を持つ人間はPacManと呼ばれ、班の滑走の最後尾をスイープしながら滑走することになっています。
ちなみにヘリに乗るときと下りるときはこんな感じです。
最初はビビりますが、すぐ慣れます(写真”ヘリに乗る”2〜4)。

写真17

写真18

写真19

写真20
ヘリから最後に降りる人は”ドアマン”として扉の開閉とパイロットへの完了を報告する役割が振られます。
わたしも数回やりましたが、最後に”降車”して、パイロットに”完了”と親指を立てて合図するところなんかなかなかサマになります。
思わず”ヘイ! チャーリィー、GO!”などと意味も無く興奮していました。
ちなみにパイロットの名前はチャーリィーでもなんでもありませんし、わめいても聞こえません。
結局のところリフトの代わりにヘリを使うというコンセプトに尽きるのではないでしょうか?
山を楽しむとかの印象は薄いです。あくまで個人的な感想ですが。
欧州からの参加者に言わせるとヨーロッパではヘリスキーはあまり無く、アメリカ/カナダ/ニュージーランドのみで盛んだということです。
ヘリがあるから高い金を払って欧州から来ているのでしょうけど、客層としては
”山屋”系の香りのする人は殆ど居らず、”ぶっとばし”系の純アルペンスキーヤーが大部分を占めているように感じました。
いずれにしてもゲレンデとも違う、山とも違うと言う異質な空間でした。

参加者の技量について
アルペンスキーでSAJ一級程度が望ましいとCMHJapanが推奨。
ただし完全に自己申告なので現地に置いてガイドが力量に達していないと判断される場合は参加を断られる場合もある。
テレマークについては斜度30度近くの樹林帯を滑ることのできる技量は必要と思われますし、滑れなければ楽しくありません。
ボーダーについても同様でスキーと同じ樹林帯の滑走を出来なければ参加しないほうが無難。
ガイドについては全員が国際山岳ガイドの有資格者で、一班一名が必ず付きます。
今回わたしの班の主任ガイドはオーストリア人でオーストリアの山岳ガイドの資格も持っているそうです。
ガイドの国籍も多岐に渡っていますが、全員が英語を話します。
レベルストークに駐在していたガイドのうち一人はニュージーランド人で日本人の妻がおり、彼が唯一”多少”の日本語を解していました。
初めての参加者にCMHが推奨しているPowderIntroクラスには例外的にガイドがトップとラストで二名付きます(写真17〜19)。

写真21

写真22
テレマークでの参加について
まずもってテレマークで参加する人がほとんど居ないので、珍しがられました。
フランス人などには”生まれて初めて実際に滑っているテレマークを見た”と喜ばれる始末。
故に昼食での合流ポイントでわたしが滑って下りてくるのを見ると全員が大喜びしてくれました。その挙句目の前で転んだ日にはもうヒーローです。
他の班のガイドもテレマークのわたしを見つけると、さもうれしそうに”太ももイタイ?””そろそろキてる”などとニヤニヤしていました。
そんな中でゴロンゴロンと派手にやっていたので、ガイドたちから賜った名前が”Crash King(破壊王)”
タマランです。
とどめは最終日にManagerから参加証がわりのピンバッジを受け取る時のこと。
他の参加者には一個のみだったのが、なぜかわたしには二つ。
なんでよ?と聞くと、これまた嬉しそうに”だってあんた人の二倍は苦労してるからねぇ”と嬉しそうに答えてました。
確かにへたくそでよく転んでいましたが。

ガイド達はテレマークについては非常に好意的でした。
わたしがドタバタやっていて哀れみを感じたのかもしれませんが、どこを歩いても”Bear!”と声を掛けられていました。日本人の中では英語を解することもあったかと思いますが、唯一のテレマーカーと言うのも大きかったようです。

装備についてはヘリの乗り降りが多い(一日に10回以上)ので他のスキーヤ-に比べてテレマークは手間です。
ステップインが欲しくなりました。
事前に師匠に相談した際に途中で開放値の設定などでトラブルとまずかろうということでG3にしたわけですが、まさかこれほど頻繁にヘリの乗り降りをするとは思いませんでした。
また他の参加者はCMHから貸与されるヘリスキー用のFat板を使いますが、わたしはテレマークと言う事で持ち込みとなりました。
”粉”が無い状況なので今回持ち込んだロシニョールのMEGABANGがどこまで有効だったのかはよくわかりません。
本人にスキルが無いために評価できないと言う事情もありますが。

高額なツアーということで年齢層が高めであることは書きましたが、すべてのサービスに手間と金が掛かっています。スキーとポールが完全貸与なので現地にはブーツを持ち込むだけ。到着時にブーツをサービスショップに放り込むと翌朝には自分の申告した板が出てくると言う按配。
ホテルのメシもこの種のツアーとしては質がよく(北米としても悪くない)、いかにも舌の奢った金持ち相手の雰囲気がします。こうして金持ちリピーターを確保する事がこんにちの興隆に繋がっているように感じます。

コースの設定は班によっても参加したツアーそのものにもよって変わるため一概には言えませんが今回のレベルストークではオープンのバーンと樹林帯が50:50というところでしょうか?
長い緩斜面をトラバースするようなことも多いので、ボードでは苦労しそうです。
ボードの参加者が多い際にはそれなりにコース取りにも一工夫するとのことですが、わたしの参加した班ではそのようなことはありませんでした。
テレマーカーだけで一グループ作れればコース的にも配慮が出てくると思いますが、テレマーカーの一般的な気質と性格の傾向を考えると、この種のツアーには参加どころか反発を食らう気がします。(あくまで個人的見解)
ただ、雄大なカナダの光景は堪能できますから、もっとチープかつスノビッシュでないカンジのヘリスキーツアーが無いもんでしょうか?

総評
今回は日本からではなくアメリカからの参加でしたが、それでも値段的には高いものがあります。
バイクが一台買える値段がかかります。わたしも2年がかりで貯金しても参加だった割に、雪の状態がイマイチだったのは残念です。
内容的にはヘリを丸一日借り切り、専任のガイドが付き、宿舎とすべての食事が含まれている一週間であることを考慮すれば妥当とも言えるかもしれません。個人的には納得していますし、今回参加できたことを感謝しております
なお、これが一番大事なことですが、行かせてくれた妻に大変感謝いたします。

文責 T.Okuma

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